交通事故事例4


被害者A子さん  52歳 会計事務所職員
加害者甲さん   46歳 会社員

【事故状況】
A子さんが青信号にしたがって交差点を進行中、左方から赤信号を見落とした甲さんが運転する車両が A子さんの運転する車両に側面衝突して、A子さんに顔面挫創・右眼窩底骨折・歯槽骨骨折の傷害を負わせた。

本件は、主として後遺症の逸失利益の有無について争われました。
逸失利益とは、後遺症が残ったために将来得べかりし利益が得られなくなった損害です。
逸失利益の本質については「差額説」(交通事故がなかったならば被害者が得られたであろう収入と事故後に現実に得られる収入との差額) と「労働能力喪失説」(労働能力の喪失・低下そのものを財産的損害とみる)の対立がありますが、 判例は差額説を採用していると思われます

A子さんは
@ 右眼窩底骨折によって外貌に醜い傷が残ってしまいました(これを醜状痕といいます。)。
A また、この右眼窩底骨折に伴う手術の際、腸骨より採骨されていて、骨盤骨に著しい変形を残しました。
B 歯槽骨骨折の傷害によって5歯に歯科補綴を加えました。

以上の症状について後遺障害の等級認定申請をした結果
@については12級14号
Aについては12級5号
Bについては13級4号
が認定され、その結果併合11級の後遺障害が認定されました。 (交通事故資料室の後遺障害別等級表を参照ください)

保険会社の後遺障害に対する賠償額の提示は次のようなものでした。
後遺障害の慰謝料として270万円
逸失利益として0円
保険会社が逸失利益による損害がないと判断した理由は以下の事情によるものでした。
まず、骨盤骨の変形については、眼窩底骨折部位に移植のための採骨によるもので、労働能力の喪失にはつながらないものと考えられる。
歯牙欠損も労働能力には直接の影響はないものと考えられ、 外貌醜状についても会計事務所の事務職であれば直接の影響はないと主張していました。

東京三弁護士会交通事故処理委員会が共同編集している「損害賠償算定基準」 (俗に赤い本と称されています)によると、後遺障害の慰謝料の額は12級で270万円(ただし、赤い本2001年版)を提案しています。
したがいまして、保険会社の提示額は併合11級の後遺障害を採用せず、12級の慰謝料額を提示しているのが分かります。

しかしながら、三つの後遺障害が残った結果これらを併合して11級と認定されているのですから、慰謝料は11級を基準とすべきと思われます。
すると、11級の慰謝料額は赤い本によると390万円となります。

さらに、上記後遺障害が直接には労働能力に影響しないといっても、逸失利益を全く認めずに慰謝料だけというのも納得しかねるところです。
確かに、外貌醜状などは特殊な職業(女優さんとかコンパニオンさんとかなど)に従事している人程には影響はないかも知れませんが、外貌醜状があることにより活動力などに影響が出ることは考えられます。

したがって、後遺障害の慰謝料の3割を増額して、この逸失利益に代えるよう折衝し、500万円の後遺障害の慰謝料を支払ってもらうことで合意が出来、解決をみることが出来ました。


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